くりふ

恐怖の精神病院のくりふのレビュー・感想・評価

恐怖の精神病院(1946年製作の映画)
3.0
【魍魎の函】

リュートン・ホラーの一本。マーク・ロブソン監督のデビュー作。

骨子の部分は、当時としては意欲的だったと伺えますが、面白さとしてはクラシカル。

ここに描かれる恐ろしさは現代も変わっていませんが、もはや当たり前のことになってしまった。現実世界の方が余程ホラー化してしまったので、映画が古びてしまった一例だと思います。

精神病院のはじまり草創期、英国で実在した施設べトラムが舞台。

ボリス・カーロフが怪嬉々と演じる院長は、患者を人間扱いせず、金儲けと出世の道具として利用し、施設は敵対者を放り込む刑場に仕立てていた。

そこにヒロインが単独、挑むことになるが…。

この院長の人物像と思想、また彼を利用しようとする周囲の権力者や政治家…彼ら悪人が、悪人だとは自覚していないこと。そして、入院患者への差別視線…本作のホラー処はそこ。

キモチよく怖がり、お化けをやっつけてオシマイ、というわけにはいきません。いわば鬱映画。

勝気なヒロインが頑張っていて、時代を考えるとスーパーヒロインとも言えますが、入院患者への本音を漏らしてしまう辺りがちょっと、黒くて深い。

リュートン・ホラー、侮りがたし、でありました。

一方、院長の末路はゴシック・ホラー調に塗り固められ、さすがボリス・カーロフだと感心しました(笑)。

<2019.8.7記>
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