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ミラノカリブロ9のドントのレビュー・感想・評価

ミラノカリブロ9(1972年製作の映画)
4.5
 1972年。目の覚めるような素晴らしいマフィア・クライム・ムービー。「タランティーノ絶賛!」は新作においてはアテにならないが旧作には当てはまる。台詞のほぼない、厚みのある音楽と共に紡がれる冒頭6分で「あっ……ワァ……」とメロメロになってあとはほとんどずっとメロメロのまま終わった。
「盗んだカネを隠してわざと警察に捕まったと思われている男が出所。すぐに組織に捕まり引き戻され、カネはどこだ? と疑われ続けつつ組織の仕事を手伝わされる中、どうにかしようともがく」というあらすじに真新しさはない。脚本もかなり気が効いているけど骨子だけ取り出せば超絶にすごいというわけでもない。
 が、この悠々とした撮影と編集と、そして役者衆の顔面力、ロケーション、どれもこれもが酔うほどに充実していてクーッと引き込まれ、引っ張り回される。警察署の口論シーンがやけに長ったらしく(削らない理由がマジでわからない。トイレタイム?)、もしこれをゴリッと削除して95分とかにしていればオールタイムベスト級だったと思う。マジで。
 ブルース・ウィリスとステイサムを足して割って忍耐を足したような渋すぎるウーゴ、終始茶色くて暑苦しいロッコほかやたらと濃い顔面がくんずほぐれつする。アマプラの字幕がアホなのすら作品の出来をまるで毀損しない。というか台詞ナシでもほぼ内容がわかるのだ。冒頭などまるでサイレント映画の名作のようである。ロッコの暑苦しいお喋りがいい具合なので音声は削除はできないけど。優雅で美しく、荒っぽく動的な最初の6分だけでもご覧いただきたい。面白いですよ!
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