おなべ

縞模様のパジャマの少年のおなべのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
3.7
◉“子どもにとって音や匂いや視覚で捉えたものがすべてである。その裏にある真実に気づくまでは” ──ジョン・ベッチェマン

◉厳格なナチス党員を父に持つブルーノは、家族と共に都心から離れた田舎に引っ越す事に。裕福ながらも、友達とも離れ離れになり、遊び相手がいない生活に退屈していた。引越しして間も無く、ブルーノは家から少し離れた所にある農場を見つける。親に見つからないように、農場へ行くための策を巡らせていたが…。

◉冒頭の引用は、本作のプロローグから。純粋な子どもの視点から観る、ナチスのホロコーストの惨さを訴えた重厚な社会派作品。本作が迎える結末に、肺腑を抉られる。

◉今まで多くのナチス・ドイツに関する映画を観てきたけど、本作のような切り口は珍しい。類似作品としては《タイカ・ワイティティ》監督の『ジョジョ・ラビット』が挙げられるも、『ジョジョ──』はエンタメ寄りに描いているのに対し、本作はシリアスでかなり重たい内容になっているため、観る方は注意が必要。











【以下ネタバレ含む】












◉衝撃のラストシーン。本心は助かってほしい思いでいっぱいだったけど、仮にブルーノが助かってしまうと、そもそも本作の伝えたいメッセージや軸がブレるため、必然のラストであったかと。「純粋無垢な子どもは関係ない!」「報われない」「あまりにも酷すぎる」…残酷な結末に色んな意見があると思うけど、それがまさしく、ナチスが過去にやってきた負の歴史そのもの。ホロコーストで犠牲になった人は、何も彼らだけじゃない。数百万人もの人々が、ユダヤ人やポーランド市民であるという理由だけで一方的に家族と引き離され、強制労働を強いられ、挙句の果てに、裸にされて無惨にも虐殺された。女性や子どもも関係なく、無抵抗なたくさんの人々が殺された。そういった事実を踏まえて本作を観ると、監督の意図や伝えたいメッセージが見えてくるはず。戦争や人種差別、迫害は何も生まない。
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