Mikiyoshi1986

挑戦のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

挑戦(1969年製作の映画)
3.8
巨匠ビクトル・エリセのデビュー作であり、他二人の監督と共に「アメリカ人の生活様式と暴力」というテーマの元で制作された3篇オムニバス映画。

アメリカの狡猾性や自由奔放な性愛観念。不道徳で風紀の乱れた国民性。
それらに毒され、結果的に犠牲になっていくスペイン。
アメリカがスペインにもたらす資本主義・民主主義の妄想的弊害がシニカルに描かれます。
こうしたいわゆる反米的プロパガンダ色の強い内容は、独裁政権下の厳しい検閲に擦り寄った結果と云えるのかも知れません。

しかし、かつてはナチス・ドイツ及びイタリア・ファシズムの支援を受けながらも、WW2中は日和見的な態度で中立を乗り切ったスペイン。
戦後はアメリカの尽力で国際舞台に復帰できるわけですが、フランコ独裁政権のそういった姑息な一面も、ここでは密かに投影されているように思えます。
良いように利用され搾取され、最後は逆に暴力で悲劇的終焉を迎えるカタルシス。

本作には当時のスペイン特有の、アメリカに対するコンプレックスや屈折した思いが全面に込められているように感じました。
これは敗戦国の日本がかつて日米安保闘争で大いに揺れた感情とも似ている気がします。

ちなみにエリセ篇はちょっと「気狂いピエロ」っぽいです。
Mikiyoshi1986

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