TAK44マグナム

ダークサイド 悪魔の力を手に入れた男のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.0
ヒーローじゃなかった!


オープニングクレジットからしてアメコミを意識したスリラー映画です。


主人公は冴えない会社員。
重度のアメコミオタクで、いつも自分に超能力があればヒーローになれるのに・・・と夢想しています。
アメコミショップの店長(演じているのはダニエル・ボールドウィン!)にも小馬鹿にされる始末。
ある日のこと、ひょんなことから同僚が超能力者だと知ってしまった主人公は、まだ力のコントロールがうまく出来ない彼を指導すれば、自分もヒーローにはなれなくてもサイドキック(相棒)にはなれるかも!と、有頂天に。
しかし、同僚は今の生活が気に入っているからと取り合いません。
ところが、ある事件をきっかけに力をうまく使いたくなった同僚は主人公を頼ってくるのでした。


前半はコメディタッチでもあるのに、後半は真面目なホラーテイストに様変わりするアンチ・ヒーローものでした。
アイデアにシナリオの質が追いついてない印象で、演技も少しわざとらしさが目立ちます。

超能力といっても、最初は落ちそうになったカップを拾ったり、草野球でホームランを打ったり程度の力で、訓練後は強力なサイコキネシスが使えるようになりますが、描写としてはドアや鍵を閉めたり、人を突き飛ばしたり、喉をしめたりぐらいで派手な破壊描写などはありません。
総じて、地味。
ディン・デハーンが自身の超能力に蝕まれてゆく「クロニクル」の縮小版みたいなものですね。

主人公は、「卒業記念だよ」などと手製のヒーロースーツをプレゼントするのですが、これがまたダサい。
名前はビクトリーマン!(苦笑)
こんなん貰いそうになったら、そりゃヒーローなんて辞退したいと思っても仕方ない!
というわけで、主人公と同僚は袂を分かつのですが、紆余曲折があって、悪党になってしまった同僚を主人公が止めようとする話になってゆきます。
もうその頃には殺人上等な完全なるヴィランと化してまして、主人公はヒーローを作ったつもりがヴィランが出来上がってしまったわけです。
オー、マイガーッ!

これ、続編を作りたかったのか、それとも一捻りくわえたつもりなのか、ラストがちょっと蛇足気味なんですよね。
スッキリ終わらせたほうが良かったと思うのですが、すごくホラー寄りな締め方にしちゃってて、個人的にはそこが一番残念でした。
この映画は、ああいうラストではなく、もっと切ない感じにしたら評価も違ってきたような気がします。

直接関係ないですけれど、ジェームズ・ガンが製作した新作映画の「Bright burn」も、超能力やヒーローを題材としたホラーでありまして、「もしスーパーマンがとんでもなく邪悪なヴィランだったらどうすんべ?」という素晴らしいアイデアが光る超期待作。
非常に今から楽しみな一作なのですが、本作も骨子は同じようなものじゃないですか。
そこにサイドキックでも良いからアメコミの世界に入りたい主人公を付け加えただけで。
よく考えればアメコミって、ヒーローがヴィランになったり、その逆もあったりと、キャラクターの環境や思想(それはつまりクリエイターの自己投影)によってクルクルと変化するのも今じゃ当たり前のイベントと化してますものね。
もはやヒーローもヴィランも形骸化してしまっている。
そこをうまくついていて、粗筋だけなら面白そうなのに、哀しいかな製作に関して必要なパワー(予算やら演出力やら)が足りてなかったんだな、と感じました。

そういうわけで、本作を鑑賞したことが「Brightburn」への期待値を上げる結果に。
まだ日本公開も決まっていないと思いますが、ハズレの無いジェームズ・ガンなので是非とも公開して欲しいと思います。


ヒロインの存在意義をもう少し煮詰めて欲しかった等、言いたいことは山ほどありますけれど、「キック・アス」や「スーパー!」がお好きであれば、人の抱えるダークな部分をフィーチャーした本作も楽しめるかもしれませんね〜。


ゲオ宅配レンタルにて