Kaito

ル・アーヴルの靴みがきのKaitoのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
4.3
前から気になっており、機会を得たので鑑賞。アキ・カウリスマキ監督作品。フランスの港町ル・アーブルの路上で靴磨きをしている男性が港のコンテナ内から逃げ出した密航者の少年を匿う。同じ頃、男の妻は体が悪くなってしまう。男と少年はだんだん仲を深めてゆき…という話。今作もセリフが比較的少ないなどのカウリスマキ節は健在だった。少年は警察に隠れているのがばれてしまうが見逃してもらう。紆余曲折ありながら最終的には少年も妻もハッピーエンドにはなるのだが、その過程の描き方が毎度のことながら非常に上手い。労働者関連作品ほどどん底からの這い上がりの風味は薄いがそれでも労働者関連作品に通ずるものは確かにあると主人公が靴磨きをやっていることなどからも感じた。ル・アーブルに行ったことがないので現実の街の雰囲気などは正直よくわからないがカウリスマキ作品は描く街とそこで生きる人々の解像度が非常に高いのではないかと感じる。撮影のために考えつくされた撮影者の理想の街ではなく、その街の日常、あるがままを切り取ったような撮影。なので、鑑賞者もまるでその街にいるかのような気分になれる。主人公の男がまるで靴磨きという職業を否定されるかのようなシーン(靴磨きの道具を蹴飛ばされるシーン)があるがそれでも彼はその仕事を辞めることなく、妻のために働く。1人の少年により人生が大きく変わった男の話。胸が温かくなり、「生」への希望を感じる作品だった。
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