ジュン

ル・アーヴルの靴みがきのジュンのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
5.0
2014年5月4日追記 奇跡が起こらないなんて誰も言うことができない。いつかわたしにも奇跡が降り注ぐかもしれないことを信じる。希望を持ち続ける信じ続けるってそういうものだと思う。


カウリスマキは作品を撮る前に何もないまっさらのフィルムを前にしてある種のディストピアを感じ、それでもその不可能性に、薄汚い世界に、抗うことをしているんじゃないかと思う。なーんて書いてしまうとフランシス・ベーコンや小沢健二について自分が何か書いているように感じてしまうけど・・・。それは、愛で世界が変えられる、世界は美しい、という世界と人間の本質に関わることに真剣に向き合って-それらはあまりに短絡的で子どものようだけれど-あまりにすごすぎて恐ろしくさえある映画を撮ったんだなと思う。愛で世界が変わるんだ、と作中ずっとカウリスマキは叫んでいる。この作品の視線の親密さ、信じることの崇高さ、愛の対象が違う対象に向けられるときの視線が移り変わるショットの美しいことったらない。ケシシュの作品をわたしは「食べる映画」だとここに書いた。カウリスマキは「視線と愛の映画」だった。常識は忘れて希望を持ちましょうという医者がいる。この映画を要約するとまさにこの医者の言った、常識を忘れて希望を信じる映画だった。ひたすら愛した映画だった。そして愛故にみらくるが起こる。愛がなければなにも起こらない。人は生きられない。視線の親密さを感じ視線が交じり合うことの感動を覚えた。同時に何がなんでも物語を進める強さと勇気がカウリスマキにはあるとも思う。愛を決定的に信じる強さ故に。愛のために人が動くなんて美しいとしか言えない。”人情”とか”情け”で人の心が動くのではない。愛しかない。そしてそれを模索しながらわたしたちは人生を続けなければならない。いまを生きるわたしたちは愛することをやめずに人生を少しずつ、否応なしに死ぬまで続けていく。愛と希望についてよくわたしは考える。どの藝術においても教訓なんて最低だと思うけど、この作品に教えられたことをひとつ言うなら「愛があるから希望があるのだ」ということだった。頭が働かないのでまた訂正します。☆5は変わらないです。
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