粉雪

ル・アーヴルの靴みがきの粉雪のネタバレレビュー・内容・結末

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

寒々しいフランス北の港町、ル・アーブル。
靴磨きをする初老の男、マルセル。
何だろう、2011年の映画で、正直「今時、靴磨きなんているのか?」というのが最初の感想。
そこから、何となく不思議な世界が続く。

どことなく昔風の画面から、過去の物語なのか?と思いきや、テレビで流れるのは欧州の移民、難民、アルカイダのニュース。
やっぱり現代か、と見ているけど、画面とどうも時代がそぐわない。
今時革靴を履く人なんてそんなにいなくて、マルセルが人の足元ばかりみていたり、神父の靴を磨いたりするところはリアルで皮肉に満ちているのに、そもそも靴磨きという職業自体が、ほとんど死滅しているはず。
他にも、不法移民がコンテナで見つかるシーンで、「運が良ければ生きている」というセリフから相当酷いシーンを想像したら、実際はみんな比較的綺麗な身なりで座っている。
銃まで持ち出した包囲を、警部が撃つのを止めたとはいえ少年が簡単に脱走する。

でも、そのどれもが嘘臭く感じない。
そもそも警部の服装が黒ずくめで独特だ。

そして、マルセルと少年と近所の市井の労働者達の善意の物語が始まるが、どこか現実ばなれしていて、説教臭さや押し付けがましさが一切ない。
淡々と物事は進んでいく。

現実にはあり得ないことに、このアフリカの少年がとても礼儀正しく善良な子ども。
お金を返しに来たりする。

そして、すったもんだの挙句、病院でのあのラスト。はじめは、マルセルが幻を見ているのか?と思ったが、2度見てみると、医者の反応やタクシー運転手の態度から、現実なのだとわかる。

見終わって、これは寓話なんだ、とやっとわかった。とても好みの映画だった。
粉雪

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