ちろる

危険な戯れのちろるのレビュー・感想・評価

危険な戯れ(1975年製作の映画)
3.5
アラン・ロブ=グリエ監督の趣味嗜好で固められた非常に妖しい作品です。
趣味嗜好で言えば他の作品ももちろんそんなのですが、他のものはその中にも文学的表現や哲学的観念が見え隠れしたものでしたが、こちらはどちらかというとそれらを後ろに置いて、欲望を手前にしたようなそんな感じ。

銀行家の娘カロリナが誘拐犯の魔の手から逃れるために、父親が郊外の怪しげな館に連れて行き匿わせるのだがそこは恐るべき「性」の迷宮だった。
監督お得意のシュールレアリスムとサディスティックな世界。カロリナは部屋を回るたびにゾッとするような書くのも憚れるような変態行為を目の当たりにすることになる。

カロリナ役を演じたイラン人の父親を持つアニセー・アルヴィナはエキゾチックな顔立ちで、美しい裸体を惜しみなく晒しているのだが、恐ろしい環境で無残な目の当たりにしてもポーカーフェイスでいるのが印象的。
そのせいで今私が見せられているのが嘘か誠か曖昧になってくるのである。

ラストギリギリまで何じゃこりゃな世界観で追い込まれて行く中、ラストあっさりと誘拐事件の解決のシーンに戻り、あっこれサスペンスだったんだっけ?とようやく思い出す。
まるでルパン三世のようなエンディングと、中盤までの悪夢のような変態の館に心が折り合いがつかないまま、あっけに取られて締め括られるのだ。
これはかなり無理矢理感がありすぎるが、こうでもしなければあのカオスは終わらせらるはずもない、アラン・ロブ=グリエ作品の中では賛否多い作品であった。
ちろる

ちろる