Azuという名のブシェミ夫人

戦争より愛のカンケイのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

戦争より愛のカンケイ(2010年製作の映画)
3.9
主人公アルチュール・マルタン。
日本人にはピンと来ないけれど、某家電メーカーと同名な上に典型的フランス人なお名前の様子。
学者肌で保守的な考えを持つ彼は、実は自分のルーツがユダヤ人であることを知りつつも、母親にそのことを聞けずに蓋をして生きてきた。
そんな彼がある日出会ったのが、ブラ丸出しエキセントリックな若い女性バイア。
バイアは自分を“政治的娼婦”と称する。
どんな極右派の人間やファシスト達であっても、彼女の武器である身体を使ってセックスすれば考えを改めさせることが出来るのだという。
守りに入ってやり過ごすタイプと攻撃して改めさせるタイプ、正反対の二人は何故か惹かれあう。

重たく感じがちな人種差別や宗教、政治問題を恋愛に絡めながらコミカルに描いていて、とってもユニークな作品。
ジャック・ガンブランのチョイ癖のある顔立ちと優しい笑顔がとても好き。
真面目に生きてきたアルチュールがバイアに翻弄される様子はなんだか微笑ましい。
彼が目的で観たのだけれど、それを抜きにしても楽しめました。
特にバイアのぶっ飛んだ行動は予想の斜め上に突き抜けているものの、サラ・フォレスティエのフルヌードも辞さない体当たり演技とキュートな表情で魅力いっぱいのキャラクターとなっている。
ジャケ写、よく見ると上着からお尻が見えている・・・このシーンはビックリだけれどバイアがどんな女の子なのかが如実に表れていて面白かったな。
いくら二つの事が同時に出来ないって言っても・・・。笑

大抵のラブシーンというのは服を脱がせていくのだけれど、フルヌードから徐々に服を着せていくラブシーンというのは初めて観た気がする。
うん、これも繊細な雰囲気があって素敵ですね。
あっけらかんとした“エッチさ”&しっとりとした“官能的”な描写がどちらもフランス映画らしくて好きでした。
アルチュールとバイアの予想もつかない変わったデートや時折8mmで撮られたような映像に切り替わるところなんかも良かったなぁ。

見えているのに、見ていないフリをする
覚えているのに、覚えていないフリをする。
学べば理解することも可能なのに、知ろうともしない。
この作品で描かれた人種問題や宗教差別、人々の政治への無関心などは、バイアの主張の仕方が極端にぶっ飛んでただけであって、ほんとは目を逸らしてはいけないこと。
目を逸らさないで、よく目を凝らして。
戦争より、愛のカンケイ。
みんなにとっての“初めてクリームを食べた日”を大切に。
争うより、愛しあおう。