長尾蛙

愛と哀しみのボレロ・完全版の長尾蛙のレビュー・感想・評価

3.9
むかし親が居間で観ていた映画の、バレエスクールのあたりと、ラストのチャリティーコンサートのシーンだけ記憶にあった状態で鑑賞。4組の親子、三代の歴史というとんでもない大河ドラマだった…。正直、誰がどの家系で、どころか、何世帯ぶんの話をしているのかすらわからなかった…。人の顔が覚えられないタイプの人間には難しい。
何より、戦争が大きすぎるウエイトを占めていて驚いた。描写は強くないが、それがかえって恐ろしかった…戦死のあっけなさ、収容所では恐らく珍しくなかった唾棄すべき出来事、我が家の喜びと隣家の嘆き…。
家族同士は互いに一切関わっていない。
家族内ですら繋がりを絶たれた。
それが最後のボレロを中心にようやくひとつの場所に。

おそらく、というか確実に、あの時代、あのボレロの会場にいた人々の中に、映画で語られなかっただけで同じように生きてきた人がいる。
長尾蛙

長尾蛙