だい

救命艇のだいのネタバレレビュー・内容・結末

救命艇(1944年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

ヒッチコック作品には珍しく、
主演女優が若くて可愛いコじゃなく、おばさん!!
しかもめっちゃ性格悪い役!
新機軸だな。

そのへんもWWⅡ真っ只中の世情の影響あるのかね。
実際逞しさが要求される話だし、
戦時中はそういう部分も求められるだろうし。
うん、戦争は映画作りにも影を落とすのね。

でもさ、
戦時中だからプロパガンダ的な要素は仕方ないにしても、
結局、ナチスは騙し討ちしてくるからブッコロ。
みたいな感情で大団円。
ってのがなんだかなー。

もうちょっとウィリー個人の内面を掘り下げて、
ウィリーはナチ崇拝者だから…
っていう感じにしてくれれば個人の問題になるんだけど、
まぁプロパガンダ的にはステレオタイプにしなきゃなのは、わかる。

でも、『海の沈黙』を観た後だからそのへんにやり切れなさが、ある。


ヒッチの作品自体は娯楽作として大好きなんだけど、
だからこそ、重めなシチュエーションには向かないのかな、って。
人物全体が軽いんだよな。
行動原理が希薄というか。

こんな過酷なサバイバルの中で、
それぞれの「どうしても生きたい理由」が見えてこないと、
やっぱり感情移入は難しい。

だから、
ガスの手術や死も、
大嵐も、
ドイツ補給艦に収容されそうなのも、
もちろんハラハラしたりはあるけど、
けどね…って感じ。

どうしても生きたい、っていう執念らしいものがないのに、
急に恋心だけは芽生え始めて、
うーん。


最後も、
まぁ軍事的な考えとして補給艦を叩くのは正義なんだけど、
日本人の立場としては、
別に連合軍、ナチスどっちにも思い入れがあるわけじゃないので、
戦艦同士の交戦じゃなく一方的な砲撃が行われてるのも何だかなぁ、とか。

作品としてダメなわけじゃないんだけど、
国内のレビューサイトの点数と、海外のサイトの点数に相当な乖離があるのを見てわかる通り、
やっぱり日本人には心から共感できない作りなんだろな。

日本人でも、
戦争や、戦後の残滓を経験した世代だったらまたいろいろあるのかもだけど。

俺らには永遠に持てない感覚だから、難しいね。
だい

だい