阪本嘉一好子

救命艇の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
5.0
ウイリーというドイツ兵を第二次世界大戦中救った救命ボートのアメリカ人やイギリス人たち7人。1944年の作品だから明らかにドイツ人に対する憎しみはひとしおだ。戦場は救命ボートの上にも存在するということだ。ヒッチコックの才能もすごいが、スタインベックも戦争中の映画をこれだけ公平に、つまり、敵味方かかわらず、それぞれの人々の善悪の2面性をうまく描き出している。あっぱれ!

ウィリーはドイツ兵で、医者でありガスの足を切り落とし命を助ける。歌も歌える。しかし、彼は水もビタミン剤も隠して独り占め。それに、ドイツ語を話し英語が話せないふりをするそしてバミューダではなくドイツに🇩🇪向かおうと隠したコンパスを使って舵をとらせる。そして、ガスを突き落とす。

コニーはガスに足を切るための安らぎの言葉を与える。でも自分勝手で物欲主義でドイツ語も操れ教養がある。映画で彼女の最後の一言にぞーっとした。彼女が、ドイツ兵を救うかどうかの結論を出したから。独裁主義ってこういう風に動くんだよなと思った。

祈りの言葉としてLord is my Shepardの続きを読んだスペンサー(カナダリー)は コニーの代わりに一言言ってたら、状況が違っていたかも。でも、当時の彼にはその力がなかった。

いくつかの記事を読むとわかるが、ヒッチコックはスタインベックにこの執筆を頼んだ。でも、映画ができあがって、みたら、スペンサー役に、尊厳を与えず、戯け者の黒人風に描いたと。これはスタインベックの書いた作品とは違うから、自分の名前を落としてくれと。
なるほど、確かに、スペンサーの存在が薄すぎたが、スタインベックは果たして、どういうスペンサーを描いたのか具体的に知りたい。