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救命艇のadeamのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
2.5
戦時下にヒッチコックが制作したシチュエーションサスペンス。
ナチスの砲撃を受けて遭難した人々が一隻の救命艇の上で救助を待つ間の人間模様を描きながら、プロパガンダとしてのナチス批判を盛り込んだ物語です。
性格や立場の異なるイギリス人の中に一人ドイツ人がいることがトリガーとなり、敵対国の人間であっても生かすべきかというドラマや、言葉の通じない相手を信じて良いのかというサスペンスが発生します。
途中間延びこそするものの、登場人物のキャラが立っており、状況設定も抜群で、限定空間でも画的に飽きさせない撮影の工夫も感じられます。
それだけにドイツ人を単純悪として描かざるを得ない時代背景だったことが残念で、正義とは何か、人間性とは何か、信じるとは何かという深みの出そうなテーマを扱っているにも関わらずそれが表面的な結論に留まってしまっています。
ブラックな結末を用意して戦争自体の不毛さを訴えるチャンスは終盤に何度も訪れるのですが、結局戦意高揚に向かわざるを得ないことも歯痒かったです。
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