キットカットガール

救命艇のキットカットガールのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
3.7
 期待していたよりも凄く良くて驚いた。ドラマ性とテーマ性の高さ、そして結構ヒューマニズムな一作だった。また、倫理を問うたり、戦争について触れていたりと社会派である。極めてシンプルなプロットの中にドラマとサスペンスが含まれており、且つ確立されたキャラクターによって語らせる、本当に無駄のない、教科書的な作品である。なお、「サバイブ」できるか否かと、「他者への信頼」という二重のサスペンスによって、ハラハラ感が高められている。

 いつ死んでもおかしくない状況故に、人は素直になれたり、逆に私利私欲に走って化けの皮が剥がれたり。こうした個々人の核が見え隠れするのは「シチュエーションもの」のあるあるで、救命艇を一つの国家と捉えてもよいだろう。秩序を維持すべくルールが設けられて、リーダー的存在が確立し、人数が少ないから民主主義(多数決)もきちんと機能する。

 それにしても、セットと思えない迫力と臨場感だった。救命艇は狭い事から、画はアップになりがちで、背景の割合の少なさから圧迫感や周囲の状況把握の困難さから不安感をもたらすが、意外にも本作はそうではなかった。クロースアップと引きの画面が、バランス良く構成されていてノンストレスだった。

*紙面に「隠れヒッチコック」は考えたなって膝を打った笑。