とぽとぽ

救命艇のとぽとぽのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
3.5
ヒッチコック × 戦争 = 漂流モノ
ナチを人間扱いするとこういうことになる…同じ人間なのか?彼らだけが答えを知ってるのよ

救命艇という限られた/閉ざされた空間(密室)ワンシチュエーションでもサスペンスを掛けることができることを証明しながら、それ以上に(ヒューマニズムを説くよりも)プロバガンダ色のあるところに着地していく人間ドラマ。餓えや猜疑心、極限状態でのキャラクター描写。そうした柱/設定的にも、舞台劇的でもある。死ぬときは一緒だ、コニー!私の友人が…スーザン・サランドンに演じてほしい主人公が、へこたれた男たちに喝を入れる!!

製作当時の時勢=言わずもがな戦争が色濃く反映された"呉越同舟"。今だったらきっと多くの作品が敵国の兵士と通じ合うさまを描くだろうけど、本作は製作が戦時下だからそんな甘いことはない。むしろ作中前半では「その国に生まれただけ」「命令されて」みたいな同情的な意見も挙がるのに、そうした人間の良心に訴えかけるような意見をひっぺ返してくる辺りが時代を感じる。大体こういうときってコバックみたいな"敵=信用ならん!殺せ"みたいなキャラクターの方が間違っているのが通説なのに、本作ではそっちのスタンスの方が合っている。登場人物たちも、きっと観客も心開き信じ切ったくらいのタイミングでまさかの裏切り!ものの見事にクソ野郎。最後の最後まで徹頭徹尾とことん敵対すべき"悪"として、心を許すな!油断するな!と教えてくれる。

ジョー、笛を吹いてくれよ。黒人がスリに長けた設定は、手癖が悪いってことか。あと、光るブレスレットという小物使い。
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