Balthazar

ハート・アタッカーのBalthazarのレビュー・感想・評価

ハート・アタッカー(2007年製作の映画)
3.7
これ、他の方も口々に仰ってますけど、明らかに邦題とパッケージが二番煎じのB級映画みたいになってて、国内の配給会社ってヒドイ商法なんですね……。
なぜ、原題のバトル・フォー・ハディサのままで公開しなかったのか?

アメリカ海兵隊を題材にしていますが、製作はイギリス映画なんですね。

ハートロッカーはフィクションですけれども、こちらは2005年の11月19日に実際に起こった、「ハディサの虐殺」事件を描いた社会派戦争ドラマとなっています。

バグダッド近郊のハディサをパトロール中、路上に仕掛けられたIEDにより海兵隊員一名が殉職、怒りと復讐心に燃える兵士たちは、たまたま付近にあった住宅地を手当たり次第襲撃していく。米軍による無差別テロ。

戦争というものは一方からの情報や声明だけを鵜呑みにして判断してはいけないと思いますね。
この映画では、米軍の視点、レジスタンスの視点、一般市民の視点と、複数の見方が交互に進行する形になっているのが印象深かったです。

ごく普通の人間である兵士も、突然地面が破裂して戦友が吹っ飛ぶ極限の環境下にある精神状態では、我を忘れて簡単に虐殺の引き金を引いてしまう。
テロリストだってやはり一人の人間であり、占領軍憎しでやっている抵抗運動が、結果的に多くの市民を巻き添えに傷付けてしまうことに葛藤を抱えている。
過激派の連中にとっては無辜の市民の犠牲すらも殉教や聖戦という美名で総括し、溢れる憎悪を反米のプロパガンダとして利用する。

テロの犠牲者の中から次のテロリストは生まれ、そのまた次の……。どこまでいっても救いようがない。
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