みんと

ルートヴィヒ 完全復元版のみんとのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.1
バイエルン王国の若き王、ルートヴィヒ2世の波乱万丈の生涯を描く伝記ドラマ。

ジョニー・デップの若い頃を思わせるヘルムート・バーガーにメロメロな作品だった。そして長い!4時間という長尺!…それでも十分観ていられる格調高い作品だった。

衣装は勿論のこと家具や調度品のディテールの拘り、色や光沢、質感に至るまでうっとりするくらい豪華絢爛。
ひたすら現実離れした高貴な人達の貴い雰囲気に身を委ねているだけでもう夢見心地。女子目線では女優陣の着こなすドレス姿に釘付け、とりわけロミー・シュナイダーの美しさったら!

ヴィスコンティ版『ラストエンペラー』??
とでも言うか、コチラも王ならではの孤独と苦悩に満ち満ちている。破滅的で刹那的な人生が優雅な調べに乗って豪華衣装と豪華セット、更には映像美によって鮮やかに蘇ったと言った印象。

王位につくからには当然帝王学を叩き込まれた筈だけれど、向き不向きと言う意味では間違いなく後者だったであろうルートヴィヒ。そう思うと狂王よりも悲運の王と呼んだ方がしっくりくる。
そして王でありながらも、いわゆる王である事を拒み自分を貫いた男の悲しい人生が切なくもある。

ラストカットからのエンドクレジットへと、ゾワゾワゾワ~っとなんとも言えない虚無感に襲われる。
後半、精神を病みどん底まで落ちぶれたバーガーの姿からは、もはやイケメンオーラまみれの序盤が思い出せず、鑑賞後に改めて見比べてしまった。なんと素晴らしい病み具合!…
長尺と撮影期間、更にはかけ離れた時代感の中での余りのなりきり具合から、演じた本人の精神状態を心配すらした。

通して淡々としつつも長尺に耐えうるこの世界観はかなり好みだった。
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