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ルートヴィヒ 完全復元版のやのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.0
完全復刻版とだけあって、とにかく長い!すごく面白かった〜とはならなかったけど、不本意に140分にまで短縮された本作を、ヴィスコンティの死後に本来彼が思い描いてた構図に近付けようと237分にしたと思うと、ただただ純粋にその労力がすごいな、と。基本的にヴィスコンティの映画は長いし、相次いで発売されている完全版はもっと長いけど、4時間とは稀に見る長さだ。

ここまで長いとさぞルートヴィヒ2世の生誕から死まで骨の髄まで語っているのか、と思うとそうではない。調べてみると史実通りにはならないし、いくつか時代錯誤している点も見つかる。ルートヴィヒ2世はある種ヴィスコンティのフィルターとして働いていて、ヴィスコンティの美意識だったり価値観、自分そのもの、あとはヘルムート・バーガーへの愛を彼の肉体を当てはめて投影していると思った。ヘルムート・バーガーは決して演技はうまくないはずなんだけど、前半の美青年から、後半の蝕まれた歯、乾ききった肌や乱れた髪の病質さへの衰えは、凄みがあった。

ヴィスコンティは舞台演出をしていたとだけあって、空間の奥行きの使い方がうまい。『山猫』の舞踏会シーンのように、荘厳なセット全体を取り込んだ構図は、やはり見応えがあった。ドイツ三部作これで全部観終わったけど、やっぱり『地獄に堕ちた勇者ども』が好きかな。どれも頽廃的で、それでもってして耽美。男色趣味は欠かしていない。ヴィスコンティの映画はどれを見ても、ヴィスコンティだ!ってなるのも魅力だなーと思う。
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