堊

彼女はハイスクール・ボーイの堊のレビュー・感想・評価

4.2
「でも、あなたっていいひとじゃない?」
「男にとっていい人ってのは死の宣告と同じなんだ」
あったらいいよね、なんて妄想を忠実に物語にしてしまったような軽さの映画が好きだ。軽すぎるがゆえにたいがい狂っている。これもそうでレポートを書くために(記者のインターンを得るために)近所の他校に男装して通うという『イケメンパラダイス』な物語を80sファッション音楽マシマシでちゃんと100分やっている。ボーリングオタクの体育教師、爬虫類好きすぎる同級生、ポルノ好きすぎて異次元な発言しかしない弟、ジェームズ・ブラウン好きすぎて踊らずにはいられない男の子…。ジョン・ヒューズものならまず出てこない狂ったフリークスたちがたまらなく愛おしい。「キムはボネガットを読むし、ロアンは有毒廃棄物の排出に反対してる」の天丼ギャグ、弟とふたりでよじのぼる階段、「裸で泳ぐ?マッサージする?わるいことしようよ」もぜんぶぜんぶ楽しいけれど、全編長回しが妙に豪華でBGMの入れ方もとても絞られていて、企画から受けるイメージのヤケクソさからかけ離れた丁寧さがとてもよかった。

・「そんなのパンクっぽい」って言葉で退けられるようにリアルな80s音楽事情が知れてとても良かった。主人公の部屋にはロッド・スチュワートのポスターがデカデカと。
・「最近のデート相手だったら、アンタが一番マシよ」とか言われながら男装した主人公が友達の女の子の同級生と隣の高校のプロムパーティーに参加するところが最高にTS百合すぎてブチ上がった。というかTSむちゃくちゃすぎて、これは当時としてはどこ向けの映画なんだろう……。
・主人公の名前がグリフィスで、ハイスクールあるあるいじめっ子の名前がグレッグ・トーランド…。

・「クライマックスだ!」なんてセリフをフリクリ以来はじめて聞いた。かなり力技のハッピーエンド!うれしい!
・波打ち際のもみくちゃファイトもなんか楽しかったけれど、やっぱりみんなでJBかけて踊り狂うシーンがあってほしかった。そこは大幅減点。
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