河

アッカトーネの河のレビュー・感想・評価

アッカトーネ(1961年製作の映画)
4.0
ピンプとして自分の愛人を売春婦にすることで、自分は働かずに収入を得ている主人公がいる。主人公のような人々にとって働くとすれば重労働しかなく、労働する生活を選べばその労働に一生縛られて生きることになる。逆に労働を拒否すれば、主人公の周囲の人々のように盗みや賭けなどによって生計を立てるか、乞食として生きるしかなくなる。主人公の名前はイタリア語で乞食を意味するらしく、その主人公は愛人からの収入で生活を立てているため、ヒモとしてある種最初から乞食のような存在で、その愛人が逮捕されることで収入源がなくなることで本当の乞食になる。
プロテスタント的な天職の考え方で言うと主人公は生来乞食で、その労働に縛られた生活にある種生理的に合わないような描き方がされている。その一方で愛している人を他者に差し出すことでしか収入を得ることができない、乞食である自分に対しても拒否感があるように描かれている感覚があり、主人公は自分を殺すような行動を繰り返す。また、主人公は利己的であるわけではなく、仲間の妻や子供を養うなど利他的な行動をする。
その主人公の自分を殺すような行動が、自分の愛している人や自分自身の肉体や精神を差し出すことでしか収入が得られない、そうでしか生きれない社会を表しているような感覚がある。それに対して自分を犠牲にせず生きていく方法としてピンプや盗みがある。そしてクライマックスでは主人公の夢の中で主人公含めたピンプ達が全員死に、盗みをした主人公は死んでその仲間は捕まる。
主人公は生まれながらに社会に合わせても合わせなくても不幸である存在で、最後はそのどちらもを拒否し続けた結果として死ぬことによってそこから解放される。それに対して、肯定的な撮り方がされているような感覚があった。
複数人が立ち上がるところを1人立ち上がるたびに同じカメラの動きで全員映すなど、かなりの数いる登場人物全員の顔をしっかり映している印象がある。そのショット単体で見るとかなり浮いて見えはしたけど、同時に誰もモブにしないっていうような意思を感じた。
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