CINEMAと暮らす

アッカトーネのCINEMAと暮らすのネタバレレビュー・内容・結末

アッカトーネ(1961年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ピエル・パオロ・パゾリーニの監督デビュー作

殺しも厭わないと揶揄され、妻とその家族からも見放される悪党アッカトーネのクズ男ぶりが見ていて哀しい。働く意欲もなく、ヒモとして生きる男達と一緒にいることで、それが彼にとっての常識になっている。周囲からもアッカトーネはどうしようもない奴だと決めつけられ、彼も自分自身の可能性を捨ててしまっている。
妻と別れて出会ったローマ生まれの美女ステラに恋をするアッカトーネだったが、仲間からは、いつステラを売春婦にするのかと賭けの対象にされてしまう。
ステラも機転が効く性格ではなく、客と一夜を過ごし、アッカトーネと揉めるが、結局は一緒に居ることを決める。
ここからがアッカトーネの頑張りどころだったが、仕事は一日でギブアップしてしまい、自分が死ぬ夢まで見てしまう。夢のシーンは秀逸で、アッカトーネとしての自分は死に、ファミリーネームのヴィットリオとして生きる=新しい人生
のスタートを意味しているのかと思ったが、結局彼は盗みの道を選んでしまう。
挙句、盗みに失敗し、警察から逃げる途中に事故を起こした彼が放った「悪くない」の一言は彼自身が人生を諦めているから放った一言に聞こえてしまい、哀し過ぎる男の人生を見た。

仕事が出来ず、自暴自棄になった彼の「世界が俺をやるか、俺が世界をやるか」の一言は彼がハードすぎる二元論の下、生きていることを端的に表している。当然、彼が世界に勝てるわけもなく、ストイック過ぎる彼の思想はは彼自身を荒ませるだけだった。きっと彼の発言を聞いたステラがこれからアッカトーネを支えるはずだったが、彼が(おそらく)死んだことで、それも叶わないのだろう。救いの手からこぼれ落ちてしまうアッカトーネの絶望は計り知れない