チネマエッセ

アッカトーネのチネマエッセのレビュー・感想・評価

アッカトーネ(1961年製作の映画)
4.9
私は実はパゾリーニの作品の中で一番好きなのですが、映画のノウハウをまだあまり知らなかった彼だからこそなのか、とても文学的な作品。
私はこの作品で太宰治を思い出すし、後半など夏目漱石の夢十夜を想起する。

またネオレアリズモの新世代と私は考えています。

主役のFranco Citti(フランコ・チッティ)はパゾリーニが街で拾ってきたまさにACCATTONEだったそう。(”ACCATTONE"とは”乞食”の意味だが、この映画の主人公は先ほども少し触れたように、乞食というよりかはいわゆる”ヒモ”である。”ヒモ”は正確にはイタリア語でPapponeとかMantenuto、作中にも何度か出てくる)
チッティはその後もパゾリーニに気に入られ、俳優として活躍。しかしこういう役以外の役をやらせたら演技が上手いのかというと、ちょっとそこはわからない。彼はとにかくACCATTONEがぴったりなのである。

この映画の不可解なところは、カソリックを軽んじているような描写もありながら、映画のところどころにいかにも崇高なバッハの宗教音楽を使っている点、そしてダンテの新曲の一説が度々出てくるところ。この映画には似つかわしくないような、神の存在がこの作品には隠れている。

パゾリーニ の作品にはこういう不調和さが共存しています。
チネマエッセ

チネマエッセ