オトマイム

ポゼッションのオトマイムのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
4.3
あなたが知っている私は私のほんの一面かもしれないし、私の知っているあなたもそうかもしれない。肉体という容れ物はひとつしかないのに、魂がふたつあったらどうしたらいい?



イザベル・アジャーニの憑依したような表情やらあれやこれやが目に焼き付いて離れない。楚々とした聖母の顔から究極の狂気まで、その幅広い表情と演技力には度肝を抜かれた。こんな役を演じてなお美しいアジャーニ…とにかく圧巻。

ぐるぐる回ったり前進したり後退したりするカメラワークも楽しく、ショットはすべて決まっている。ズラウスキー作品の持ち味ともいえるこの独特のカメラワークはもちろん彼による指示だと思うけれど、その多彩さが美しくなめらかにつながり且つ迫力を持って迫ってくるのは撮影監督ブルーノ・ニュイッテンの手腕なのだろう。狂気の描写はもちろん、穏やかに子供の登場するショットもいちいち素晴らしい。あの驚愕のシーンは日本の春画にインスパイアされたのだろうか。ここがクライマックスかと思いきやラストがまた凄い。ピークがたくさんありすぎて、精気を吸い取られどっと疲労感に襲われた。

話も複層的に練られており、伏線が回収されるようなされないような、謎も多々残りながらの幕切れ。しかし鑑賞後はたいへん満足感があった。
これまで観た中では『夜の第三部分』がいちばん好きだけど、これは間違いなく傑作だと思う。(怪作かな?)