南宮龍八

止められない結婚 「劇場版」の南宮龍八のレビュー・感想・評価

3.0
西洋かぶれの成金マダムと伝統を重んじる厳格職人の対立はさながら西洋の資本主義文化と素朴な韓国伝統文化の対比のようだ。下手クソな英語を喋り贅沢三昧の実業家マルリョン(キム・スミ)を資本主義国家の悪い見本と見立てて西洋文化を揶揄しているように思える。土地を買収することに必死になっているマルリョンと頑なに土地を手放さない伝統風水師チマン(イム・チェム)の確執に結婚を決意する2人の子供たちの話が絡み複雑な騒動に発展。しかし、マルリョンとチマンの対立を中心に面白おかしく描いていくので、主人公である筈のチマンの娘ウノ(ユジン)とマルリョンの息子キベク(ハ・ソッチン)の存在感は次第に薄れていくのである。むしろ脇でボケをかますチマンの弟チル(ユン・ダフン)の方が目立っていて得をしている感じである。マルリョンとチマンが隠しカメラでチマンのウノとキベクの行動を盗み見し会話を勝手に吹き替える場面は最高に笑えるが、2人が子供たちを妨害しようとして手を組むうちに奇妙な連帯感が生まれていくのも皮肉で面白い。酔っぱらったマルリョンとチマンが子供たちの前で咄嗟にキスをする場面があるがこんなの正直観たくなかった(笑)前半に4人のドタバタ劇を集中的に見せて笑わせ、後半はマルリョンの意外な過去を見せてホロリとさせるのだが、食事もまともに取らず女手ひとつでキベクを育ててきたことを涙ながらに語るキム・スミの演技は流石に説得力がある。最後にマルリョンの苦労話をウノがさり気なく人形作りのテーマとして語るシーンが感動的だ。全体的に観ると韓流ドラマの枠を超えていない安い作りであるが、キャスティングのおかげで十分楽しめる内容である。ただ、キム・スミとイム・チェムのキャラクターがあまりに濃すぎて若手主役のユジンとハ・ソッチンが完全に脇へ追いやられた感じである。パラグライディングでの出会いやクラブでの乱闘事件など何気に面白かっただけにちょっと気の毒な感じもするのだ。ところで、最近日本版DVDが発売・レンタル開始されたのだが、ジャケットに表記されている「オリジナル版」ってどういう意味だろう。

10/01/10
南宮龍八

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