シズヲ

ブルースチールのシズヲのレビュー・感想・評価

ブルースチール(1934年製作の映画)
3.4
『駅馬車』に出る前のデューク、若いし細身なので見てて新鮮な気持ちになる。偉そうでふてぶてしい後年のデュークが馴染み深いだけに、さも好青年のように爽やかな笑顔を作ってる様は奇妙な違和感があってやたら印象的。まだ役者としての個性が確立する前の黎明期のような味わいがある。でも粗野な爺さんと組むと映えるのはこの頃から変わらないので微笑ましい。デューク、最初から最後まで西部劇俳優なのだなあ。

50分前後という短い尺なだけあって後々のテレビ西部劇の原型に近いフォーマットで、後に残るようなテーマ性も無いので単純なB級娯楽作に徹している。「命を助けられた」という一点で主人公への疑念があっさり解ける爺さん保安官や速攻で悪役の目論見を知るヒロインなど、展開の簡素さも半ば様式美的。オープニングとエンディング以外で一切BGMが流れないので、サイレント映画の延長線上めいた味もある。冒頭から主人公のパーソナリティを一切語らずに“謎の流れ者”のように話を動かし、最後の最後に正体を明かすという構図もささやかながらカタルシスがあって面白い(円盤のパッケージでは素性を即バラされてるけど)。

“ヒロインが落馬→主人公が馬車の前面に跳び移る→疾走しながらヒロインを回収→そのままヒロインが再び乗馬”というシークエンスが流れるように描かれたり、要所要所でのアクションのストロングぶりもやたら印象に残る。ただ平野でのチェイスを見ていると、ジョン・フォードが演出する疾走感がいかに凄かったのも分かってしみじみしてしまう。
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