不在

田舎司祭の日記の不在のレビュー・感想・評価

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)
4.4
神は苦しんでいる人を選んで救う訳ではない。
我々はただ信じ続ける事しか出来ないのだ。
旧約聖書のヨブ記では、素晴らしく敬虔で悪事とは程遠いとされたヨブに対し、それを疑うサタンが神と交渉した上で、彼を試す為に家族や資産を奪う。
神は自らの力を証明する為に、人間に対する悪魔の試練を承諾したのだ。
この映画の主人公は、まさにこのヨブといえる。
敬虔な信者である彼に、見えざる悪魔が災いをもたらすのだ。

新約聖書におけるキリストも、弟子に裏切られ磔にされる。
あのキリストすらも一度は神に見放されたと嘆くが、それすら神の計画の一部であり、我々の為に犠牲になった後、彼は復活を遂げるのだ。
ベルイマンの『冬の光』と同じく、この映画の主人公も、自身の苦悩が実はキリストの受難と重なっていた事に気付く。
彼はその時やっと、神の恩寵を感じるのだった。
不在

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