悪魔の毒々クチビル

スペース・ゾンビ/吸血ビールス大襲来の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.0
空気(突風)感染系ゾンビ(吸血鬼?)映画。

まず本編の前に始まる監督の挨拶が微笑ましかったです。
「当時ホームビデオとして流通していたこの作品が、こうして日本でDVD化してとても嬉しいです。どうぞお楽しみください」的な丁寧な挨拶をされたら、そりゃあこっちも「楽しませて頂きます」ってなりますよ。
しかもこの監督、最後今作を原題の''Bloodsuckers from outer space''じゃなくてわざわざ邦題の「スペース・ゾンビ」って呼んでいましたね。良い人だなぁ。

ということで、超低予算で作られた作品だし撮影やら編集やら演技に関してはここでとやかく言わないです。
脚本は3日で書き上げたそうですね。

冒頭のおっさんがゾンビ化するっていうベタなシーンでは、一旦苦しんで倒れてから変異するんですけど、その起き上がり方が何か可愛らしくて笑えました。
因みに突風が吹く→倒れてゾンビ化する。という流れが撮りたかったのにその日に限って全く風が吹かなかったので、SEと演出で何としたとのこと。

そして「処刑軍団ザップ」とかを彷彿とさせる、とち狂った劇中音楽の選曲センスがかなり印象的でした。
最近のホラー映画ではほぼ流れないような、間の抜けた音楽が無駄に耳に残ります。テレレレ テレレレ テレレレレ~♪
そして主人公がゾンビと格闘する場面で流れるのは、めちゃくちゃ陽気でアップテンポなカントリーミュージックだったのでそこも楽しかったです。
何なら主題歌までありました。

で、主人公がパンクで立ち往生している時にたまたまヒロインが運転する車が通りかかって「乗ってく?」と声を掛けられるっていうベタなシーンなんだけど、この主人公、直前に家族と口論していたのもあって車にめっちゃ八つ当たりしていましたね。
蹴るどころかフロントガラスとかライトとか手当たり次第ジャッキで粉々に砕いていて、ヒロインはよくそんな凶行に走っている男を拾う気になったもんだと感心しました。

他にも研究所で何やら怪しい実験をしている場面に入る前に用務員のおじさんが部屋を覗いて、「何だここは、怪しげなことをやっておるぞ!」と無駄に大声で説明してくれる親切設計も。

ゴアはあんまりないんだけど、腕を切り落とすシーンは如何にも見せ場です!ってな気合いの入った映し方で好感が持てました。
でも一番怖かったのはこのゾンビについて科学者と軍人が会議している最中、急にお姉さんが声の限り絶叫するっていう謎のシーンを合間にぶっ込んできた所でした。しかも何かに襲われている訳でもなく、本当にただただ叫んでいるだけでした。何だったんだアレは。

あと一番微笑ましかったのは主人公とヒロインがゾンビから車で逃げるシーンで、ゾンビ化したおばさんが彼らに真顔で手を振りながら見送る所でしたね。

ラストもこの手の映画にありがちな終わりかと思いきやちょっと''ズラす''ことによって、雰囲気はのっぺりしたままなんだけど割と洒落にならないエンディングになっちゃったのも印象的で良かったです。

そんな沢山の人にお勧めするような作品では勿論ないけど、良かった所とかやたら印象に残った部分がしっかりあったので観て良かったです。
小規模ながら製作陣のやりたいことをやりきれたって感じが出ていたのもええやないか。