明石です

シスターズの明石ですのレビュー・感想・評価

シスターズ(2004年製作の映画)
4.5
田舎の安ホテルに泊まったバンドマン一向を襲う女幽霊。『人肉ラーメン』の監督のデビュー作ということでDVDを入手して鑑賞した。さすがはホラー大国タイ産のホラー、劇中随所に工夫が凝らせていて、しかもちゃんと怖い。「シスターズ」というと、某ブライアン·デ·パルマの名作と同じタイトルなので、それとの関連を期待してたら、めちゃくちゃJホラーだった笑。

日本のホラーから入ってアメリカ映画を観るようになった私の観点からすれば、タイのホラー映画は和洋折衷という言葉が似合う。Jホラーの奥ゆかしさと、ハリウッドの幽霊見せまくりスタイルを混交し、観客を飽きさせないことを徹底した作風が多い中、本作もその列に並ぶ一作でした。何より、登場人物の近くにいる(=画面には映っている)幽霊が、霊感のない彼らにはイマイチ見えていないという設定は珠玉だと思う。

照明を暗く落とした中で全てを見せず、鏡に映った幽霊だけははっきり視認できるなど、リアリズム路線の奥ゆかしい工夫が◎。登場人物の主観では何も見えてなくて、ただ何となはなしに足を引きずっている。でも鏡には、脚にしがみつく男の子が映っているとかいう画期的なアイデア。ただ、恐怖シーンで効果音つきのカットバックが多用され、その上にカメラのフラッシュ風のトランジションも重なるので、視覚的にはけっこう負荷がかかる。電気を落として観ていたけど、つい部屋を明るくしちゃった(暗い部屋でじっくり観れないホラー映画ってけっこう致命的では、、笑)。

『人肉ラーメン』がテキサスチェーンソー風だとしたら、本作はめちゃくちゃ呪怨。髪の長い女幽霊と、真っ白な顔の男の子というセット、絶対意図的じゃん笑。あの特徴的なア”ァ”ア”ア”ァ”という声も入ってるし、男に暴行を受け我が子ともども死亡した女性が、生前の恨みで怨念と化すストーリーもそう。呪怨のオマージュというよりはリメイクに近く、『人肉ラーメン』では随所に感じられたシナリオ面でのオリジナリティが(デビュー作というのを差し引いた上でも)やや薄いかも、、と思っていたら、終盤の畳みかけるような人怖要素とタイトルを絡めた種明かしにたまげた。

全体的に、怖いか怖くないかで言えばとても怖い。全編100分超にわたりフルスロットルで幽霊を出し続け、しかもマンネリ化させないのは凄い才能だなと素直に感動した。Jホラーではそもそも幽霊の存在をゴリ押しせず(『リング』や『仄暗い水の底から』よろしくサスペンス展開に持っていき、最後にガツンと見せる作品が多い印象)、ハリウッドだと序盤から何もかもを見せすぎて押しつけがましくなるきらいがある。幽霊を見せないと飽きられるし、見せすぎても飽きられる。ホラー映画における永遠のテーマだと思うのだけど、それを本作では、これだけ繰り返し霊を登場させておきながら、あの手この手で工夫を凝らし最後まで退屈させず見せてしまう。タイ産ホラー恐るべし。
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