Mikiyoshi1986

仁義の墓場のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

仁義の墓場(1975年製作の映画)
3.8
本日1月12日は敬愛する深作欣二監督の没後14年目に当たります。
東映やくざ映画から遺作「バトル・ロワイアル」まで生涯をかけて「暴力」を描き続けた彼は、戦中に経験した無意味な暴力にとことん向き合い、その思いを作品に込めた暴力職人。
彼の作品は海を越え、タランティーノやジョン・ウーなど世界的な監督にも大きな影響を与えました。

そんな深作東映作品の中で一際異彩を放ち、無軌道な暴力で彩られたのが「仁義の墓場」

日活がロマンポルノへ路線転換したことで日活ニューアクションを支えた多くのスター達は続々と退社することになりましたが(裕次郎や小林旭、芽衣子さんetc)、渡哲也もまさにその中の一人。
元々「仁義なき戦い」の主役は文太さんではなく、渡哲也が演じる予定だったのは知られた話ですが、
快気後はその穴埋めとして本作で晴れて東映初主演を飾ることと相成りました。

戦後やくざの伝説的存在として今も語り継がれる石川力夫に同郷の深作が目をつけ、病み上がりの渡哲也も渾身の役者魂を注いだことで凄まじく重々しい作品と化したデスメタル具合ね。
(弟・恒彦の「私設銀座警察」はグラインドコアね)

彼は親分や義兄弟、周りに元凶を振り撒きながら破滅に向かって突き進む、死神のような男。
クソ迷惑な野郎が仁義を踏みにじり、傍若無人の限りを披露しますが彼には一ミリも共感できない。
共感できないのに何故か彼に魅了されてしまう不思議。

デビュー間もない頃の多岐川裕美(ちょっと二階堂ふみ似)を手込めにしても、仁義に刃を向けても、ポン中になっても、その中にはどこか虚無感が漂っていて本当に渡哲也に何かが憑依しているよう。

他にも、新宿やくざを演じるなら俺以外にいねぇだろ!とばかりに安藤昇、
脇役ながら拳銃をぶっぱなすポン中役で素晴らしい怪演を魅せた田中邦衛、
毎回「そうか、小指噛みちぎるのはこれじゃないよね」と思っちゃうハナ肇など、魅力的な俳優が脇を固めます。

ラスト、墓に彫られた文字にさらっと突っ込むナレーションが大好き。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986