櫻イミト

イカリエ-XB1の櫻イミトのレビュー・感想・評価

イカリエ-XB1(1963年製作の映画)
3.0
「スタートレック」(1966~)等のSF作品に影響を与えたとされるチェコスロヴァキアの本格SF映画。チェコ・ヌーヴェルヴァーグ幕開けの1963年制作。原作は「惑星ソラリス」なで知られるSF文学の巨匠スタニスワフ・レムの「マゼラン星雲」。

2163年、40人以上を乗せた宇宙船イカリエ-XB1は生命探査のため、アルファ・ケンタウリ系へと向かっていた。帰還する頃には地球では15年が経過しているという大規模計画。途中、朽ち果てた20世紀の宇宙船、放射線を発するダーク・スターなど様々な難局に遭遇しつつ旅を続けるが。。。

閣下殿のご紹介で鑑賞。

非常に真面目で渋いSF映画だった。当時としては宇宙船による大人数航行の設定は斬新だったと思われる。20世紀の宇宙船の残骸に接触し「戦争の行われた悪い時代」と揶揄するシーンがあるが、作品の本質は社会批評ではなく、未知なる宇宙を人間が旅したらどのような状況になるかをシュミレートしたSFドラマと受け取った。

白黒なのも手伝って1963年制作にしては全体的に古風な雰囲気。ちなみに日本特撮は「キングコング対ゴジラ」(1962)「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)など怪獣映画の全盛期。

宇宙船内の群像劇は確かに「スタートレック(宇宙大作戦)」を彷彿とさせる。しかし脚本に大きな山や華がなく単調なので少々長く感じた。「2001年宇宙の旅」(1968)への影響が指摘されているが、個人的には物語の落としどころに「未知との遭遇」(1977)を連想した。

宇宙船のセットはシャープで、1963年制作にしてはレトロ調。好みによってはノスタルジックな魅力を感じるかもしれない。衣装や脚本のスタッフは後に「ひなぎく」(1966)に参加する。

SFエンタメ感は弱いが、映画史的に重要な一本。
櫻イミト

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