mare

影の列車のmareのレビュー・感想・評価

影の列車(1997年製作の映画)
4.5
映画を構成する光、影、音のみで語られる凄まじく陶酔する幻想、幽霊が蜃気楼のように立ち昇り在りし日を追憶するメモリアルな記録があまりに美しい。確かにそこにあった記憶を拾い集め、フィルムの再生と停止を繰り返していく中で、現代の街並みからかつてと変わらぬ風景、息遣いを描写し、一つのフィクションとして再現し甦らせる。映画を作るという行為そのものに再現性を秘めた側面があり、リュミエール兄弟が100年前にカメラに収めた列車を今一度発車させようとしている。それは魂を運び、誰かがそこにいなくとも文化として永久に残るものであり、今日も誰かの胸に感情のシグナルとして伝っていく。ここまで映像を観ているだけで喜びが享受できる体験というのは、タルコフスキーやエリセの映画を観たとき以来で、具現化されたイメージを伴わなくとも、ザラつき断片的なコラージュの積み重ねだけで感受性が触発され圧倒的な心地良さをもたらしてくれる。
mare

mare