猫脳髄

マザーズデーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

マザーズデー(1980年製作の映画)
2.7
トロマ謹製ハッタリ・スラッシャー。ほぼほぼ「悪魔のいけにえ」(1974)のエピゴーネンなのだが、当時流行の青春友情モノのモティーフをくっつけて、一挙両得を画策した(か知らんが)珍作である。大学の同窓生の女性3名が、毎年開催するミステリーツアーの一環で、場末の森にキャンプに訪れる。旧交を温める3人だが、実はその森にはババアに率いられたキチガイ一家が潜んでいて…という筋書き。

冒頭でキチガイ一家が咬ませ犬のカップルを血祭り(ナタで首チョンパ!)にあげ、スラッシャー劇の開幕を高らかに宣言するが、そこから主人公らの現在と青春グラフィティを丹念に映し出すドラマパートが進行する。ようやく一行と一家が接近遭遇するがそこからの展開が珍妙なのである。

一家の自宅は外観こそボロいものの、電化製品や食料、娯楽も豊富で、屋内にはジムスペースまである。「悪魔の~」のソーヤー一家がド貧乏で自給自足していた頃からは隔世の感がある(※)。どういうわけか森にババアの姉が潜伏しているらしく、頭の弱い息子2人が姉に備えてトレーニングする様子をひたすら映し出す。

結局、一家に虐待されて主人公のひとりが命を落とし、そこから残りのメンバーによる壮絶な復讐劇がはじまるのだが、一家より断然、報復側の方が苛烈なのである。クライマックスでのビニールオッパイを使ったババア殺しのくだりと、ラストのオチたるや唖然とする。冒頭とラストはホットでナカはダラダラというハッタリ映画の典型である(しかし暗転はよくあるが、「黄転」は初めてみたわ)。

※バカ息子たちが歯を磨いていたりと、割と普通の家庭生活が描写される。場末の殺人一家ですらモノにあふれて生活しているさまを捉えて、消費資本主義批判と解釈する向きもあるようだ
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