のほほんさん

バックドラフトののほほんさんのレビュー・感想・評価

バックドラフト(1991年製作の映画)
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昔観たのだけど、なぜかちっとも覚えていなくて、初めて観るくらいな気持ちで観た。
なんせあの有名な曲が本作のものだと初めてわかったくらいなのだ。
なんで覚えていなかったのだろう?


何はともあれ、とにかくてんこ盛りな作品。
一つ一つの火事も相当な規模で、あんなのを1度でも体験してしまったら心底トラウマになる。そんな現場に何度も踏み込んでいくのだから、改めて消防士の勇気には頭が下がる。

だからそれだけで充分な気もするのですがね。なんと連続放火事件の行方を追うなんていうまさかの展開もある。
それがあるのはデ·ニーロ演じる調査官が事故か事件かを見極めてくれるからであり、一連の火事に陰謀の香りがするからなのである。


意図的にバックドラフトを起こすこれは、ド派手な爆風と共に火が襲ってくるのだから間違いなく火事なんだけど、火がとにかく拡がるようなものではない。火が燃える様を見て喜ぶ、怪演サザーランドのような典型的な放火魔とは違うのがポイント。



身の危険を顧みず炎の中に飛び込む消防士の姿は、まさに英雄と呼ぶにふさわしい勇敢なもの。しかし実際には英雄的行動を取ろうする個人の思いがあったら務まらない。というのが消防士たちの姿から滲み出る。そのストイックな献身性がまたカッコ良いのだけど。



父親の背中をストレートに追い、その背中を超えようとすることで悲しみを克服しようかとする兄と、様々な職を経て父と同じ道を歩むことに決めた弟。
そこには目の前で父親を失った弟の苦悩がある。一方で兄は、父と同じ勇敢な行動をすることが、救助中に命を落とした父の勇気を身を持って証明したいかのよう。


お互いそれぞれに父の背中を追い、そして寄り道がありつつも最悪な現場でのクライマックスに辿り着く。


放火テロとでも表現すべきなのか、ある意味ストーリーは荒唐無稽ながら、そこで描かれる父を軸として描かれる兄弟関係と英雄の姿はかなり重奏的。
ヒロイズムを考える上でも面白い作品であった。


兄の存在を嫌がおうにも意識せざるを得ない役柄がウィリアム·ボールドウィンなのが面白い。そして出番は多くないが、怪演楽しげなドナルド·サザーランドにはニヤリな一本