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ブラジルから来た少年のEikeのレビュー・感想・評価

ブラジルから来た少年(1978年製作の映画)
3.5
1978年の作品ですからもう40年以上経つのか…。
「ローズマリーの赤ちゃん」などで知られるアイラ・レヴィンのベストセラーの映画化。
当時脚光を浴びていた「ある科学技術の進展」を上手く取り込んだ極上のサスペンス映画です。
ただし、本作はなぜか日本では公開されませんでした。
今でこそDVDやストリーミングもある訳ですが当時はいわゆる「お蔵いり」となる話題作もポツポツとあったりして、この前年の1977年には大作「ブラック・サンデー」も諸般の事情で公開が取りやめになったりしてましたね。

そんな本作ですが今見てもちゃんと面白い。
なぜなら脚本と演出、役者の演技それら全てがトータルパッケージとして「作品」を作り上げているからですね。
昨今の作品の様に派手なシーンを見せることだけに力を注ぐような「いびつさ」はここにはありません。
今の感覚からすれば地味と言われるかもしれません、しかしグレゴリー・ペックとローレンス・オリビエ、この2大名優の圧倒的な存在感とじわじわと高まるサスペンスフルな物語の展開に目が離せなくなること請け合いです。

ナチ戦犯のメンゲレ博士を演じるグレゴリー・ペックにとってはこれが最初で最後の「悪役」ということで異様に力が入っている気がします。
対する「伝説の」ナチ・ハンター、リーバーマンを演じる”サー”ローレンス・オリビエは人間臭さと善良さをうかがわせて対照的です。
オリビエ氏と言えば本作の2年前、76年には「マラソン・マン」で映画史に残る悪役、ナチスの「白い悪魔・ゼル」を演じておりました。
名優ですから当たり前かもしれませんが本作の役との余りの落差に同じ役者とはとても思えません(こちらも必見ですよ)。

純然たる娯楽作ではありますがラストの展開など、考えさせる点も多々あって見応えがあります。
人を形成するのは何なのか?それは「血」なのかそれとも「環境」なのか?

そして、やはりジェリー・ゴールドスミスの素晴らしい音楽について一言触れないわけにはいきません。
映像と物語に対して音楽が「何をすべきであり、また何をすべきでないのか」本当に良く理解されていたコンポーザーでした。
もはや現代においてこれほどの「映画音楽」が実現できるものかどうか。
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