すずき

ブラジルから来た少年のすずきのレビュー・感想・評価

ブラジルから来た少年(1978年製作の映画)
3.7
30年もナチス残党を追い続けている老ナチハンター・リーベルマン。
ある日、ユダヤ人青年活動家コーラーからタレコミが。
曰く、南米に落ち延びたメンゲレ医師とナチス残党が、何やら怪しげな計画をしているとの事。
彼らの計画とは、2年間の間に北米〜ヨーロッパ各国にいる、94人の特定の男性を殺害するというもの。
彼らの共通点は、年齢65歳の公務員である事。
ナチス残党内でもその不可解な作戦に疑問を持つ者が少なくなかったが、果たしてメンゲレの真意とは…?

主役の老ナチハンター役にローレンス・オリヴィエ、メンゲレ医師にグレゴリー・ペックの2大スターを起用したサスペンス。
序盤はナチスの不可解な作戦の謎に引き込まれたが、中盤若干退屈してきた。
だが、そのタイミングで「別の場所で、全く同じ顔の少年が出てくる」という強烈な違和感を挟み込んで、再びストーリーに引き込ませる緩急が上手い。
この少年(たち)こそが、タイトルにもなっている物語のキーパーソンなのだが、これが何というか絶妙な顔つき。
何処にでもいるような、しかし何処となくアンバランスで印象で、邪悪さや不穏さを感じさせる。

彼らの正体はネタバレになるので伏せるけど、現在では珍しいネタではないので、普通に予想がつくと思う。
でも、それが判明するシーンはやっぱりドキドキワクワクしちゃうな。

メンゲレ医師は、総統閣下への盲信的な執着(=愛?)と、科学的な興味により途方もない計画を立ち上げた。
クライマックス、メンゲレ医師はその剥き出しの狂気で、少年に呪われた出自の真実と予言的な運命を告げる。
しかしそれに対して、少年の答えが痛快!
その後のリーベルマンの選択も、そんな少年の様子を見たから、そうしたのだろう。
だからこそ、ラストシーンの不穏なカットは余計に感じた。
ビデオ版ではそのカットが削除されているようで、同じ意見の人も少なくなかったのかな。