昼行灯

赤目四十八瀧心中未遂の昼行灯のレビュー・感想・評価

赤目四十八瀧心中未遂(2003年製作の映画)
3.6
キャスト陣からして、浪漫三部作☝️水色がかった画面や水琴窟のような音楽(監修も三部作の人)、朴念仁な主人公の行動が常にほかの登場人物に把握されてるところなどまさに陽炎座。主人公が一心に串打ちするうちに狂った量串打ってしまっているところはツィゴイネルワイゼンのちぎりこんにゃくのよう。

三部作と違うのは、裏社会のリアリティを感じさせるところ。アパートの住人たちの生活は詳しく描かれないのだけど、明らかに異様で行動の節々から暴力の匂いがする。例えば神社で鶏に花札をぶっ刺す内田裕也や性関係の歪みなど、、主人公はそんな彼らの生活を伺いしろうと必死に壁の向こうに耳を済ませるけど、気づけば自分が見られているというのが怖い。
とはいえ彼らの素性に比べれば主人公なんて相当無化された存在で、明らかに住む世界の違う人間同士。彼らにとって主人公は他者だからこそ、色んな物事を頼めるわけで、、そんな主人公とヤクザの妹で在日朝鮮人が心中しようとしても、死の重みが違いすぎる。主人公は有名大卒だからなんでもやろうと思えばできるブルジョワなのに遁世のために裏社会に紛れ込んできたのが間違いだった。主人公はなんでも出来るから心中もできるけど、女は裏社会の呪いから逃れられない。物語の前半で部屋に入ってこられるばかりだった主人公が終盤で突然行動しまくるのは、こういう背景があるからだと思う。赤目四十八滝というロケーションも川がふたつに別れてて、2人の運命の違いを象徴してるのかなと思った。
ありえたはずの心中のショットでは、女がオフィーリア化されてて、あーやっぱりこの女は男の幻想が投影されたオブジェなんだって感じ。ヒールで山登りも現実的じゃ無さすぎ笑濡場も唐突すぎたなあ。女にとって主人公が自分を違う世界に連れてってくれそうな他者として映ったのかもしれないけど、だとしたらもっと主人公を魅力的に描くべきだったなあ。主人公イエスマンすぎて好きになるような個性がまずなかったような

あとめまいと同じカメラワークがあった!カメラを退行させながらズームって急に出てくると何が何だかガチで分からない。内田春菊の娼婦も良かったな。化粧がドロドロになっても、それでも山手線を唱え、東京という別世界で生活することを夢見る娼婦。
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