このレビューはネタバレを含みます
“水は流れる”
とても不思議な映画だったと思う。
レビューで多くの方が書いている様に、何も起こらないからだ。
それでも、この映画から感じるものは多くあった。
そのことも言い切れてしまう。
映画のタイトルでもある“マザーウォーター”とは、ウイスキーの仕込み水のこと。
水はウイスキーの出来栄えを左右してしまう程、重要な存在なのです。
そんな“水”が今作を考えていく上でとても重要な存在になっていたと思います。
映画の中では幾つか重要な台詞が出てくるのですが、印象に残った台詞のひとつにこんなやり取りがあります。
「水は流れているからね」
「でも、流れていることに気が付かないことも分かったかも」
水はきっと、生きていることの根本を暗示しているのだと思いました。
だからこの映画は何も起こらないのだと。
ウイスキーも、豆腐も、コーヒーも。
大人も子供も。
変わらない日常も。
気が付かないけれど、実は全部繋がっている。
どこかではじまって、どこかで繋がって、もしかしたら新しい場所に流れて行くかもしれないけれど、そうやって巡って行く。
“水に流す”と言うことも含めて。
大袈裟かもしれないけれど、この映画は生きているすべてのものに贈られた作品なのかもしれません。
もしも何かに迷った時は、この映画を観ると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
僕もそのことを覚えておこうと思います。
観て良かった。
余談
とても久し振りにレビューを書きました。
と言うか、映画を観ました。
皆様のレビューを読むことは続けていたのですが、しばらく“感じる”ことをやめてみようとそんな心持ちだったので、自分が映画を観たり、レビューを書いたりすることはお休みさせて頂いていました。
久し振りに観る映画として、この『マザーウォーター』を選んだことは、今の自分の気持ちにぴったりだったと思っていて、映画も今回の僕のレビューで言うところの“水”の様な存在なのかもしれないとあらためて感じています。
たとえば本当に、映画が誰かにとって水の様な存在だったとして、その映画を通して“伝える”と言うことは自分をつくり、他の誰かの何かになることもあるのかもしれないとも感じました。
自分の中に流れるものを大切に。
またゆっくりとはじめてみたいと思います。
読んでくださった方、レビューを書かない間もフォローして下さった皆様に感謝を。