ベビーパウダー山崎

死神ランボー 皆殺しの戦場のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.5
この金もなく、酷く貧しく荒れ果てた家で不平不満しか吐かない妻と異様な泣き声の奇形児と暮らしていかなければならない地獄。借金返済を求めるチンピラに幼い売春婦、気だるく仕事を探す失業者、もちろん学がなければ職はない。知り合いはヤク中で高齢の親は病気で死が近い。社会からは見捨てられ、誰も助けてはくれない。ごみ捨て場のウジ虫に鬱々と陽は暮れる。戦争トラウマ云々ではなく、ただ私たちは金がない。己の人生も他人への感情もまずは確かな生活ありきで、幸と不幸の大半は金に左右される真実。だらしない音楽が更に死にたくなる。家族を皆殺しにしてから水を飲もうと蛇口をひねるが水滴さえ出ず、諦めて腐った牛乳を飲む、この自殺する前のなんてことはない「寄り道」が抜群に良い。アケルマン『ジャンヌ・ディエルマン』の日常とよく似ている。親が赤ん坊を殺す映画として『アンディ・ウォーホルのBAD』との二本立てを渋谷ル・シネマで希望。