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ありきたりの映画のooospemのレビュー・感想・評価

ありきたりの映画(1968年製作の映画)
3.6
だって「5月」だから。
いわゆるいつもの映画鑑賞、の心地とかけ離れすぎて『ゴダールを観てる』強烈さは拭えない。ナンテールの学生たちとストの活発な映像に、アイロニックなほど平和的な野原で話し合う若者たちの映像を掛ける。若者たちの言葉は時折毛沢東などの引用に遮られながら、まとまることなく永遠に続いていく。「5月」が終わっても労働者の闘いは終わらない、とでも言いたいように。
言葉遊びが大好きなゴダールを観るときに言語の感覚は必須だと思うんだけど(ゴダールを観るためにフランス語を始めたようなもの)、この台詞を真に解釈するには膨大な量の学が必要だからそれは置いておくとして、構造としてかなり単純な文が続いているのではないか、と聞いていて思った。これは興味深い。声に声が重なって聞き取りにくくなっても何となく言い切りが強くおさまってしまう所とか、ゴダールパワーなのだろうかそれともフラ語だからなのか。participerとparticipationが同じ一文中に入っていたりとか、何なんだこれは語呂遊びか?饒舌すぎてそんなことしてる暇なさそうだけど。いや全然全部なんて聞き取れっこないんだけれど、何だろう、結局ラスト・カットでフランスの国旗に見立ててbleu/rougeと書きまくってるあたり、それにイメージの力を混ぜ込んで対立という組織の在り方やどっち付かずの知識人の立場というところまで彷彿とさせるあたり、もう俺たちは言葉に埋もれてるしかねーんだよとでも言いたげなゴダールの投げやりな言い切りが浮かんでくる。完全に勝手な解釈ですが…

ストローブ・ユイレ曰く『68年5月に真に釣り合った作品』だとのこと。
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