ひでG

金環蝕のひでGのレビュー・感想・評価

金環蝕(1975年製作の映画)
3.6
映画自体の話と政治と映画の話に分けて書いてみたい。

まず、山本薩夫監督作について。
こーゆーのを「骨太作品」と呼ぶのだろうか。
他の代表作に「不毛地帯」や「戦争と人間・三部作」らがある山本薩夫。

登場人物が多く、それぞれの人物が利権や出世欲や性欲のままに行動し、絡み合う。

登場人物が多いが、単純化された人間描写が多いので、思ったより分かりにくくはない。

細かい機微より、社会や歴史のダイナミックな動きとそれに翻弄されたり、あがなったりする人間模様が得意な監督さんだと思う。

本作は、そーゆー点で、山本薩夫さんらしい、彼の代表だと思う。

男→利権!カネ、ワイロ、出世!
女→芸者、愛人!
男→性欲!抱く、波!

みたいな、割と時代がかった描写や演出が続く。

政治の闇や病みを描いているが、不思議と正義の側が出てこないのは、観客にとっては有難い。

ダム工事の受注に絡んだ問題を扱っているが、
それを告発する三国蓮太郎議員も→なんと、与党側の人間!

高橋悦史の新聞記者も、そして、最大のキーマン宇野重吉のフィクサーも決して正義のために、この疑惑を暴いているのではないところは興味深い。

オールスターキャストの中で、善人ぼく見えるけど、結構状況見て、きちんとした悪をしてる大滝秀治法務大臣。

それから何と言っても、フィクサー宇野重吉!
善人顔を修正する為に歯を抜いた?のか、人相がガラッと変わっているのもすごい。

さて、政治と映画の話。
今年封切られた「新聞記者」のレビューの中に
「今の時代、よく作ったなあ〜」があったが、
それを考えると、
日本の政治情勢、少なくとも権力側にきちんと物申せる雰囲気みたいなものは、この映画の公開当時より「退化」していると言わざるおえない。

本作は政党やゼネコンは架空の名になっているが、実際の疑獄事件を元にしていることは自明であるし、オールスターキャストのような大々的な作品として興行できたのだ。

たまにはこーゆー作品が大手で作られてもいいと思う。

本作でも「総理の妻のメモ」が大事なポイントとして出てきたが、

今だって、同じことあったでしょ!
題材はいっぱいあるよ!
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