悪魔の毒々クチビル

マジッククリスタルの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

マジッククリスタル(1986年製作の映画)
4.5
「私は人妻キラーだ」

不思議なヒスイを発掘した友人から連絡を受けた特殊部隊の青年が、ヒスイを巡りインターポールの捜査官と共にソ連のKGBと闘うお話。


バリー・ウォン監督のSFアクション映画です。
主演にアンディ・ラウ。
最近スコット・アドキンスのYouTubeチャンネルでシンシア・ラスロックと対談しているのを観て初めて彼女を知って気になっていたんだけど、主演作は殆ど廃盤になっており視聴が難しく取り敢えず今作なら宅配レンタル出来ました。

アンディ・ラウも役名がアンディ・ローだったりシンシア・ラスロックの役名がシンディだったりと、殆ど変えないのも如何にもって感じよね。
メインはアクションなんだけど、不思議な力を持ち人の脳内に語りかけてくるヒスイとアンディの甥っ子ペンとの友情も描かれておりSFジュブナイルな一面もあります。が、ヒスイの見た目がゴツゴツしたエメラルドグリーンの石から無造作に脚が生えたり指や口が出てきたりと、何一つ愛嬌がないです。成り損ねの亀みたい。
何なら後半以降はアクションが良すぎて完全に空気になっていますし、途中までは主人公達のピンチを魔法で助けてくれたのにラストの方はガン無視で只の淡緑の石です。
中盤の除き魔に24時間、手足を逆にする罰を与える所とか面白かったのに。

期待していたシンシアのアクションは本当に素晴らしくて素手での格闘は勿論、序盤は何故か常備していた三つ折りの槍を見事に使いこなしたり剣さばきも非常に格好良かったですね。
格闘も最後の方では蛇拳的な独特な動きや構えまで披露したりと、めっちゃ器用で万能。
アクロバティックな動きも含めてキレが半端ないので、ずっと観ていられちゃうわね。

意外にもペンのお母さんまで相当強くてびっくりしました。
しなやかなソードアクションかっちょええ。
自宅に侵入してきたKGBの暗殺者たちに見事な開脚蹴りを決めながらの「勝手に入って来ないでくれる!?」が一般人っぽい台詞で、尚良かったです。
敵ボスのカロフ相手に苦戦する中で「女性に闘いは無理だ」と言い放ったカロフに、「男女差別よ」とシンディも参戦する場面が一番上がりました。
ここでシンシアの剣技が拝めますが、撮影中に剣がカロフ役のリチャード・ノートンの顔に当たってしまい一旦病院へ治療しに行ったそうで、一部のシーンをスタントダブルがこなしていたそうです。
ここのバトルも大変よろしかったですね。

勿論アンディ・ラウも見せ場は沢山あり、剣相手に傘で挑む序盤や途中の多数相手にキレのあるカンフーで立ち回る姿もとても格好良かった。
でも今作自体が結構シンシア推しみたいな所もあった気がするんですよね。
ラストのカロフ戦も最初はシンシアが一人で戦っていて、後からアンディも助太刀する形だったので。トータルだと彼女の方がカロフと戦っていた時間も長かったです。
シンシアの相方の捜査官がちょっと活躍少な目だったかな。

アンディの部下におっちょこちょいのおかっぱメガネデブがいたりと、コメディキャラもしっかり用意していますが如何せん詰め込み過ぎたのか、アンディの友人の妹はヒロインっぽかったのに途中から一切出番が無かったしラスト15分で半ば強引に「インディ・ジョーンズ」的なアドベンチャーや宇宙要素入れてきたりと節操が無い。
と言うのもあって、最終的にヒスイとかソ連とかどうでもよくなってハイレベルなアクションしか印象に残らない結果になってしまったんだけど、普通にアクション映画として観たら最高だったのでそれで良かったと思います。

昨今女性主体のアクション映画とかも増えている傾向にある気がしますが、そういう流れを求めるなら今作含めシンシア・ラスロックの出演作は再評価されるべきでしょう。復刻版Blu-rayはよ。
そりゃスコット・アドキンスも若い頃一緒に写真撮ってもらってサインもしてもらっちゃうよね。