垂直落下式サミング

メギドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

メギド(2001年製作の映画)
3.5
兄は大統領で大悪魔。そんなことあるんだ(ないです)
全人類に仇なす大悪党を一人で掛け持ちするやつが現れるとは、ちょっとすごい作品である。
『オーメン2』みたいな展開からの、マジで神と悪魔の世界を分ける大戦争に発展していく驚天動地。物語は速度が早くて密度が高いし、ロケーションやら美術やらにお金がかかっているっぽいので、それなりにみれる。
描かれている悪魔くんの物語は、兄弟の半世紀以上にわたる戦いの大河ドラマ。この世に生まれてから、少年期・青年期を経て大人まで、この大きな流れのなかを驚異的な速度で泳いでいく。ものすごくながい物語のダイジェストっぽい印象はぬぐえないものの、駆け足だけどちゃんと丁寧な作りではある。
とりあえず、実験的な物語。悪役が世界連合指導者っていう立場まで本当に登り詰めてしまうのがすごい。アメリカ合衆国大統領が、自国より大きな組織からの圧力によって頭を抱えている様子なんて、ちょっと他の映画ではみたことがない光景だ。
『オーメン』のシリーズぜんぶを大真面目にやったらこうなるのか。ルシファーは不死身の悪魔だからか、人の寿命をフルマックスに使って悠長に世界制覇計画を遂行しているが、あんな隕石とか落とせたり、指から雷だせるなら、まどろっこしいことせずにさっさと武力行使した方が手っ取り早いけどな。
放送メディアを効果的に使って支持を得ているのは面白かったけど、結局は裏で嬉々として反体制思想の弾圧などをしている量産型の独裁者になってしまって、ありきたりだったのが残念。
ちゃちい三文映画のわりには話の規模が世界的なのは、往年の円谷特撮みたいで実家のような安心感。このストーリーを、最初から最後までやりきったんだから、それだけで偉いと思う。