Jeffrey

ザ・カーのJeffreyのレビュー・感想・評価

ザ・カー(1977年製作の映画)
3.0
「ザ・カー」

本作はエリオット・シルヴァースタインが、ユニバーサルで1977年に監督した自動車とホラーをフューチャーした画期的なアクション映画で、このたびようやく国内でBDが発売されたので購入して10何年ぶりに鑑賞したけど面白い。やはり殺人自動車の1971年式リンカーン・コンチネンタルマークIIIをベースに改造された車のデザインがかっこいい。物語はヨハネの黙示録を下敷きにしているような場面が結構ある。暗示が非常に巧みである。これ以降から車が殺人を犯すホラー映画はワンサカ出始めた。その中で有名なのはやはりカーペンターの「クリスティーン」だろう。個人的にはキングが初メガホンした「デビル・トラック」も捨てがたい。本作の主演のジェームズ・ブローリンはもちろんみんなご存知ジョシュ・ブローリンの父親で、非常に似ている。そしてヒロイン役のキャスリーン・ロイドは美しかったし、ジョン・マリー、ロニー・コックスなど豪華な役者が脇を固めているのも良かった。それに基本的には名作路線のスコアを担当するレナード・ローゼンマンがSF、戦争、アクション映画などのサントラも作っているが、本作も音楽を担当している。



さて、物語は中西部の平和の田舎町サンタイネスに姿を見せた漆黒の車。次々と人を襲う車を追って、警察の捜査網は狭まるのだが…と簡単に説明するとこんな感じで、「エクソシスト」以降のオカルト要素を取り入れながら、突如どこともなく現れる車が人を殺していくと言う娯楽映画である。確か日本では当時、「ブラック・サンデー」と「ジェット・ローラー・コースター」と本作が夏の3大娯楽映画として日本で公開される予定だった。ところが、「ブラック・サンデー」の上映中止と言う事件が起きた事は映画ファンの中では有名だろう。確か監督は本作を作る際に、スピルバーグの傑作のサメ映画「ジョーズ」を彷仏とさせるいわば陸版の「ジョーズ」を作ることがポイントだったそうだ。それにしてもジョージ・ハリスがリンカーン・コンチネンタルマークⅢを2ヶ月かけて改造した車のビジュアルインパクトが凄まじくかっこいい。

まさに主役と言える。今思えば「バットマン」のバットモービルを始め数多くの映画やテレビでカスタマーカーをデザインしてきた彼の力量が輝いている。中の見れないフロントガラスと言うのは非常に魅力的である。それに低い車高もたまらない。車好きが見ても息を呑むほどかっこいいと思うだろう。そもそもアントン・ラヴェイサタンの聖書の一説で幕を開ける冒頭もたまらない。70年代はサタン教会が多くのメディアやカルチャーで取り上げられてきたと言う歴史がある。この映画は序盤というか冒頭の若いカップルがサイクリングを楽しんでいる中、競争している中を割り込みながら微笑ましいリア充をぶち壊した黒塗りの車が入ってくるショットが最高すぎる。冒頭からこの映画は観客の心をつかむ演出をしている。まさに狩人なのだ。第一の被害者がブロンド娘、そして第二の被害者がその彼氏である茶髪の男性で、今で言う煽り運転さながらのぶつかり合いで追い込んで崖から突き落とす(というか橋)…その後に壁についた血だらけのショット、サイクリング自転車のタイヤがひん曲がってくるくると回る固定ショットはすごく良かった。これから悲劇が始まると言うばかりの、ヒッチハイカーの災難とはまた違う恐怖が動き始めた一瞬だった。

この映画は一応配慮しているのかわからないが、直接的に人が轢かれる描写は刺激が強いと思われ、そこまで見せていない。ラッセルクロウ主演でアオリと言う作品だったかな…確かタイトルが…公開されるみたいだが、こういった煽り運転をテーマにした作品は日本国内でも普通に制作すれば結構良さそうな感じがするのだがいかがだろうか、ここ最近車に関してのホラーアクションなど恐怖映画が少ないなと感じてしまった。ニュースを見れば、ひき逃げ事件だったり煽り事件のドライブレコーダーの映像が大量に出てきたり、ご老人(若者でも突っ込むので差別的に言われないように若者も…もつけておく)の方々のコンビニへのツッコミ動画など社会に出てくるので、それらをテーマにした作品を作ってみてはいかがだろうか。

そしてこの作品の大迫力があるのはやはりクライマックスの崖からのダイブである。かなりのスタントのアクションだったり、手に汗握るシーンが豊富で、あの大量の火薬で大爆発するあのシーンは圧倒的だ。まだCGがない時代に合成をうまく使ってあそこまで表現できたことを心の底から凄いと思った。ラストスパートにかけては、タイムリミットのサスペンス的な演出になり、スリリングなスコアも徐々に加速していく感じでたまらない。
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