猫脳髄

ザ・カーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

ザ・カー(1977年製作の映画)
3.6
自動車が暴走する映画と言えばスティーヴン・スピルバーグ「激突!」(1971)を嚆矢とするが、本作はそこに「ジョーズ」(1975)の不条理さを足し込んだ、”陸ジョーズ”と呼ぶべき黒塗り自動車の襲撃と警官たちとの対決を映し出したパニック・ホラーである。

何と言っても暴走車の造形とそのアクションがよい。マットな黒塗りで、霊柩車のような不吉さを漂わせたリンカーン・コンチの改造車。しかもドアノブが一切ないのが示唆的である。そいつがユタ州の田舎町を襲撃し、容赦なくニンゲンどもをひき殺す。向かってくるパトカー相手にわざと横転して正面から叩き潰したり、自分をバカにした相手の家を探し当てて、大ジャンプで家をブチ抜くという大技が冴える。

割と粘着質な改造車を追うのは保安官のジェームズ・ブローリンで、改造車と警察の死力を尽くした対決ぶりがアツい。また、主要人物かなと思わせといてすぐ轢かれたり、逆にこいつは死ぬなと予想していた悪党が活躍するなど番狂わせも面白い。”陸ジョーズ”と言ってしまえばそれまでだが、地上でも逃げ場はないぜ!という製作陣の意気込みを感じる佳作となっている。
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