Mikiyoshi1986

ジプシーのときのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ジプシーのとき(1989年製作の映画)
4.3
ジプシーって聞くとミッシェルの「ジプシー・サンディー」が脳内で自動再生される小生ですが、
その寄生体質から世界の嫌われ者として長らく泥水をすするような歴史を歩んできた不遇の浮浪民族ジプシーことロマ。

ロマ族を多く抱える旧ユーゴスラビア出身のクストリッツァ監督がジプシー目線から、彼らの風習文化や生業などその生活を赤裸々に綴ったマジック・リアリズム作品。
かつては芸能と神秘性を誇った民族ですが、現代では物乞いや売春・強盗など貧困と犯罪にまみれた彼らの生態を、
不思議な能力を持つ主人公の青年デルハンが一手に背負うことで物質と精神の豊かさの対比を浮き彫りにさせていきます。

純朴な青年が大人の汚い社会に順応してゆく。
すべては生きるためであり、これは嫌われ者ロマとして生まれついた宿命なのか、それとも誰しもがブチ当たる成長の通過儀礼なのでしょうか。
喪失を奪還する為の犠牲と代償はあまりにも大きく、奇しくもそれは運命として伝統と共に受け継がれていくものなのかも知れません。
随所に挿入される幻想的な映像と音楽がとても印象的。

現在、ロマ族は子供がハイティーン期に差し掛かると現代的な生活を体験させ、その上でロマの生活を続けるか辞めるかを決めされるのだとか。(ロマを選択する若者はたしか6,7割くらいだったような?)
数年前にドキュメンタリー番組で観た記憶があります。

元々は274分の大作らしく、その全長版は是非とも拝んでみたい!
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