Mikiyoshi1986

囚われの女のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

囚われの女(1968年製作の映画)
3.7
11月20日は"フランスのヒッチコック"とも称されたサスペンスの巨匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のお誕生日。
生きていれば今日で110歳に。

本作『囚われの女』をもって監督を引退したクルーゾーですが、
男女間の"主従と愛"というテーマをここでも彼は十分なサスペンスタッチで描破します。

画廊のオーナーである青年スタンのSM趣味と、そこに惹かれてゆく現代芸術家の妻ジョゼ。
彼の性的倒錯に囚われてゆく女、その一方で男は彼女の愛に囚われてしまうという相互関係が、巧みなモンタージュによって二人の心理描写を浮き彫りに。
ほぼ同年のアントニオーニ『欲望』とも通ずる60年代ポップアートのテイストは、外面的な形骸を通して人間の内面への探究を映像に落とし込んでいます。

本作のアイコンともなる現代アートの視覚と色彩の効果を大いに取り込み、特に生死をさまようトリップ映像は圧巻。
音楽の効果も、古典と前衛の両端を使い分ける離れ業を披露しています。

また劇中の展示会にはミシェル・ピコリやクルーゾー作品の常連シャルル・ヴァネル、名優アンドレ・リュゲ、そして『冒険者たち』で現代芸術家を演じたジョアンナ・シムカスも一瞬ながら端役で登場。
これだけで一本の映画が撮れそうなほど、大変豪華なカメオ出演であります。
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