『動物パニック映画とSF映画の曖昧な境界』
ヒッチコック作品のタイトルバックデザインなどで知られるデザイナー、ソール・バスの唯一の長編映画監督作品。
60年代から盛んに作られた動物パニック映画の一本かと思ったら、これがSF映画だったというオチ。
知能を得たアリが、人間を含む他の動物に牙を剥くというありがちなイントロから始まるのだが、これが思いもよらぬ展開を見せる。
監督がソール・バスだというせいで変なバイアスでもかかっているのか、オープニングからなんとなくサイケな香りが漂うし、途中登場する蟻塚の禍々しくも美しいフォルムに惚れ惚れ。
科学者は敵であるアリに対してコミュニケーションをとろうとするが、本人に言わせると「こちらにも知性があると知らせるため」にやっているという、他にあまり例を見ない行動に出る。
(もう一人の博士は『クイーンを殺せ』と至極もっもなことを言う)
そしてあまりにも意表をつくラスト。
多分ここでこの作品の評価はぱっくり二つに別れると思う。
私はもちろん「あり」の評価だったのだが。
公開当時、アメリカでは興行的にこけたらしいが、フランスではそこそこヒットしたという。
日本では劇場未公開、テレビの午後ロー的な枠で初めて公開された。
まあとにもかくにもこの作品はヒロインのリン・フレデリックに尽きる訳で。
彼女がもう本当にかわいいのよ、
で、彼女の事をネットで調べると、これが結構数奇な人生で結局彼女は39才の若さで亡くなってしまったという。
そういう意味でも本作がカルト映画と化してしまったのがうなづける一作なのでした。
本作は実際のアリのどアップ映像が頻出するので虫嫌いの方には絶対におすすめしません❗
セルBlu-rayにて。21.09.09
2021#012