Lila

もののけ姫のLilaのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.9
アメリカ映画館でジブリフェスを開催していて、映画館で観られる貴重な機会に観てきました。客席は埋まってました。さすが宮崎駿のジブリ作品です。公開当時に映画館で見ていて、何度もテレビ放映や録画を見てましたが、最後に見た時から恐らく10年以上のブランクがあるので記憶を呼び覚ましながら。

大傑作。でもそんな「傑作」っていう言葉で片付けてはならない。レベルが違い過ぎて、凄まじ過ぎて恐れ多い。大人になって観たら、そんな気持ちになりました。

もう内容は語り尽くされていますが、人間のエゴと自然との共存。生きるとは何か。人間とは何か。絆とは何か。アイデンティティとは何か。 

無駄なシーンが1ミリもない完璧さ。最近映画館通いしてますが、こんなに集中力が切れないのも久しぶりでした。映画館で観る良さがある作品です。最後に緑あふれる時の安堵感こそが本能なのかな?って感じます。

エボシがシシ神様を撃つ時の哀れさが一番苦しい。神の聖域にも侵入する人間の浅ましさ。でも、そんなエボシもタタラバ全員の命を預かり、弱者に生きる希望を見せている存在なんですよね。技術の進歩や進化にも貪欲。これが人間全てでした。

まず、とにかくアシタカがあまりにもかっこ良過ぎます。一度かけられた呪い、運命は変えられない、それでも生きることの意義を体現する存在です。大人になって見ると、自分のことやポジショニングをよく分かってるなー!と。迷いや葛藤は一切描かれない。どちら側だけにつくとかもしない。その場で正しいと思う事をする人。「曇りなき眼で見定める」そのままの人。

それでいてサンとのシーンでは、しっかり男を出します。エンディングで抱くところとか特に!分かってるなー!感!モテ男の天然。一緒にいるのが全てではない、変えられない価値観はある、別々の生活がある、でも「共に生きよう」の説得力凄いです。だって、アシタカは「曇りなき眼で見定める」青年過ぎるので。何があっても味方でいてくれる人ではない。でも愛はある。

余談ですが、ヤックルもかっこ良すぎる。ヤックルなしで、アシタカは完成しない!

大人になってみると、サンは本当に無垢に育てられた少女だと実感します。人間にも山犬にもなりきれない。何も分かっていない。自分を捨てた人間を憎み、大切なものを守りたい、危害を与える人は許せない思い。本来人間はサンのような反射的感情を持つはずですが、社会で生きていくうえでの教養や文化が私たちを形成しますね。

吹替のチョイスもありましたが、やはりこの作品は、時代を含めた言語の奥深さが詰まってるので、字幕を選びました。「そなたは美しい」を「You’re Beautiful」と言われても、違いますよね…

もう一回映画館行くか悩んでるレベルですが、この感動のまま置いておこうと思います。次の「紅の豚」も絶対見に行く!(ラピュタ、トトロ、ナウシカ、魔女の宅急便、ポニョは出張や旅行している間に終わってしまった…こうなると悔しい。昨年もあったので、来年もあること祈る)

宮崎駿作品の旬さを幼き頃に見て、大人になって改めて噛み締められる世代で幸せだ、と思えました。
Lila

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