こーたろー

もののけ姫のこーたろーのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
5.0
再鑑賞したから記録。
もののけ姫はジブリで1番好きな作品で、小さい頃から何回も見ている作品。

本作はジブリの中でも特にメッセージ性が強く、宗教(神道)、自然、疫病といったテーマが根幹にあり日本的であって身近な要素を取り入れつつ、鑑賞後に考えさせられるテーマになっているのが好きな理由である。

日本はキリスト教のような一神教ではなく、昔から全ての物に神様が宿っているといったアミニズムの考え方を持った国である。本作を観ていると今は姿が見えなくなってしまっただけで古来の日本には本当にモロや乙事主、シシ神のような様々な神様が存在していたのではないかとすら考えさせられる。ではなぜ現代では神様が目に見えず、信じている人すら少なくなっているのかといった疑問の答えが本作である。人間の繁栄のために森を切り拓いて、鉄を作った結果失われた存在としての森の神様を描いている。
この映画の素晴らしいところは人間側だけが一方的な悪として描かれているだけではなく、エボシ御前も病気の人や人身売買されていた人を食わすために森を切り拓いてタタラ場が必要だった点である。悪など存在していなくて、両者共に自分達のために争っている。だからこそ争いが終わることはなく、その争いの中でさらに悲しい出来事が起こってしまう。それは正にモロがサンの出生について語る、「お前にあの子の不幸を癒せるか。あの子は我が牙を逃れるために人間が投げてよこした赤子がサンだ。」といったセリフに集約されている。
だからこそアシタカは事前に争いを止めることはできず、最後にはシシ神の首を元に戻して、強制的に争いを終わらせるといった選択しか取れなかったのだと解釈できる。

様々なテーマを内包しており、正義や悪といった考えで二分できず毎回見る度に考えさせられる本作は本当に素晴らしい作品。これからもずっと見返していくと思う。